記録の活用例

 

南海地震は今後50年以内に80%の高い確率で発生が予測され、早急な震災対策が必要とされています。そのためにはどんな揺れが生じるのか正確な予測が不可欠です。

この地震は、断層の大きさが平成7年兵庫県南部地震の約40倍、想定されるマグニチュードが8.5に及ぶ巨大地震です。このような地震では震源から周期数秒に及ぶ長周期の地震動が生成され、さらに大阪平野の厚い堆積層によって増幅された大振幅で長周期の地震動が大阪中心部及び周辺部を襲う可能性が高いと考えられます。従来の加速度型強震計は、このような周期の長い地震動を観測するのは必ずしも得意ではなく、それによる小地震記録は巨大地震の強震動予測のための精度が十分ではありませんでした。

関震協が大阪平野やその周辺域で観測に用いている速度計強震計は、10秒以上の長周期から0.1秒以下の短周期まで広い周波数帯域で精度よい記録を得ることができます。

関震協がこれまでに得た小地震記録を用いて、想定する南海地震の強震動波形とその応答加速度レスポンス・スペクトルを計算した1例がここに示されています。推定された想定南海地震波は、加速度は大きくはないものの周期の長い大きな強地震動が4分以上続く、などプレート境界に起こる巨大地震の特微を良く表しています。

関震協記録を用いて経験的グリーン関数法で合成した大阪湾岸部における想定南海地震波

 

また、大阪平野湾岸部に特有な周期約2秒及び6秒付近に卓越周期をもつことがわかります。関震協の豊富かつ高精度な観測記録は、広い周期帯域で精度の高い地震動の解析・調査研究に大変重要なもので、来るべき南海地震の強震動予測及び地震被害想定に欠かせないデータとなっております。

 

【京都大学名誉教授 入倉孝次郎】

 

 

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