地震防災フォーラム2023

― 2023年トルコ・シリア地震の被害と国際支援 巨大内陸地震で何が起きたのか ―

開催報告

 

主催 : 関西地震観測研究協議会(関震協)

協賛 : (公社)土木学会関西支部 / (公社)地盤工学会関西支部 / (公社)日本地震学会 / (公社)日本地震工学会 / (一社)日本建築学会近畿支部 / (一社)建設コンサルタンツ協会近畿支部 / 関西ライフライン研究会 / 特定非営利活動法人 リアルタイム地震・防災情報利用協議会

後援 : (一社)日本建築構造技術者協会関西支部

日時 : 2024年1月24日(水) 14時〜17時

場所 : キャンパスプラザ京都 第3講義室 +zoom

参加者: 82名

 

[ 司会 : 後藤浩之(京都大学,関震協広報分科会主査) ]

1. 開会挨拶 岩田知孝 (京都大学,関震協座長)

2.「関震協の取り組みの現状」 赤澤隆士 (関震協事務局)

3.「令和6年能登半島地震(速報)」

     浅野公之(京都大学,関震協地震記録分科会主査)

     楠 浩一(東京大学)

4.「トルコ・シリア地震災害調査 〜その概要と学び〜」 楠 浩一(東京大学)

   東京大学地震研究所の楠教授からは、『トルコ・シリア地震被害調査〜その概要と学び〜』についてご報告があった.文科省・3学会合同(日本建築学会・土木学会・地盤工学会)による調査団が派遣されており,その人数は日本側27名、トルコ側22名という非常に大きな調査団であることが特徴である.調査範囲も非常に広く,従来の被害調査ではRC造,組積造だけの場合が多いが,それだけでなく,免震構造や鋼構造なども実施されている.調査範囲は、北はMalatyaから南はAntakyaまで約400〜450kmであった.AFADによる強震動観測では,多数の記録が観測され,震度6強以上となる大きな地震動が観測されている.強震動観測点付近の倒壊率の調査では倒壊率が10〜54%というとても高い数字であった.被害調査は多岐にわたり,地表断層の確認,倒壊率調査,病院免震構造(転がり免震),プレキャストRC造工場,地盤災害,液状化,組積造建物,RC造建物(パンケーキ破壊,過密配筋など),トルコと日本の被災度区分判定手法の比較,建物の詳細調査(解析モデルを作れるように),建物被害と事業継続性,基準・復興について,多彩な被害状況や調査状況の紹介があった.今後も継続して,調査・研究を実施予定であり,建物の詳細解析などはトルコ側と共同で実施予定であること,今回の被害調査の報告書については2月を目標に出版予定であることが紹介された.(ニュージェック 羽田浩二 記)

       

5. 「JICAのトルコ地震防災支援 〜過去の支援と今後の展望〜」 横井俊明(国際協力機構)

   国際協力機構の横井俊明博士からは,トルコにおける地震防災支援の歴史と2023年カフラマンマラシュ地震(トルコ・シリア地震)後の取り組みが紹介された.トルコは1960年代に日本で始まった国際地震工学研修に多くの研修生を派遣してきた国で,その研修の修了生や日本の大学への留学生が活躍している国である.その人的ネットワークにより,1993年に始まった「トルコ共和国地震防災研究センタープロジェクト」と,2010年に始まった「地震観測能力強化プロジェクト」という2つのJICAプロジェクトで大きな成果をあげている.特に強震観測網の整備は目覚ましく,先進国並みの高密度・デジタル観測網が構築され,近年発生した被害地震では貴重な観測記録が取られている.また,日本をはじめとした外国からの支援に加え,トルコ独自のプロジェクトが複数立ち上げられて,観測網の発展や防災機関の拡充が行われていることの重要性も強調された.防災対策においては,被災データのデジタル化・共有化などにおいて,すでに日本よりも優れた取り組みが多数なされていることも紹介された.このようにトルコの地震防災は高いレベルに到達しており,今後は人的交流,情報交換,人材育成といった面での継続的な取り組みが求められるというまとめがなされた.(関西大学 林 能成 記)

       

5. 閉会挨拶 上林宏敏 (京都大学,関震協幹事)

          

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