地震防災フォーラム2017

「関西圏で予測される内陸地殻内地震」について考える

〜兵庫県南部地震、熊本地震を経験し、なお考えるべき課題〜

開催報告

 

主催 : 関西地震観測研究協議会(関震協)

協賛 : (公社)土木学会関西支部

(公社)日本地震学会

(公社)地盤工学会関西支部

(一社)日本建築学会近畿支部

(一社)日本地震工学会

(一社)建設コンサルタンツ協会近畿支部

関西ライフライン研究会

特定非営利活動法人 リアルタイム地震・防災情報利用協議会

後援 : (一社)日本建築構造技術者協会関西支部

日時 : 平成29年5月29日(月) 13:40〜16:45

会場 : 大阪市立総合生涯学習センター (大阪駅前第2ビル 5階) 第一研修ホール

参加者 : 125名

 

1. 関西圏で考えるべき内陸地殻内地震(1995年兵庫県南部地震、2016年熊本地震を踏まえて)

岩田 知孝(京都大学防災研究所 教授)

昨年4月に発生した熊本地震の特徴を概観した上で、関西圏で備えるべき内陸地殻内地震について、最近の重点研究の成果を元に話が展開された。

熊本地震では、地震学的にはあり得ることだが、これまであまり注目されてこなかった2つの事象が発生した。1つは地震の揺れによって、震源域から離れた場所(大分県湯布院)でM5.5程度の地震が誘発されたことである。これまで微小地震や低周波地震が大地震の揺れの到達によって誘発されたことが報告されてきたが、この規模の地震は初めての例である。余震が広域に広がり、多発したことで、地域社会に不安が広がった。

もう1つは、M6.5を超える地震の28時間後に、さらに大きいM7.3の地震が発生したことである。政府の地震本部は大地震直後に「余震活動の見通し」という発表を1998年から行っており、熊本地震でも実施していた。しかし、さらに大きな地震が発生したことから、余震という用語が不適切であり、その呼びかけ内容も一般的事象にとどまっていたことから、2016年8月に「地震活動の見通し」という情報にあらためられた。

近畿圏では2つの内陸地殻内地震についての調査研究が行われてきた。大阪・和歌山県境付近を通る中央構造線については、2013-2015年にかけて、活断層の活動履歴調査、地下構造探査、地下構造モデルの構築と強震動評価についての研究が実施された。また大阪府内を通る上町断層帯については、2010-2012年にかけて中央構造線と同様のテーマについての調査が行われた。

これらの調査により、大阪平野周辺の地下構造や断層形状について多くの情報が得られ、様々なシナリオにもとづく強震動ミュレーションが可能になった。その結果、上町断層帯の地震については PGVで200cm/sという極めて大きな地震動が大阪平野の北〜中部の断層面上端近傍で発生する可能性があることがわかった。発表当初は「大きすぎるのではないか」と考える研究者もいたが、昨年の熊本地震の際に益城町や西原村でそれを超える強い地震動が観測された。実施に起こりうる強さの地震動であることが確認された。詳しく見ていくと、強い地震動はいくつかの要因が複合的に関係しているので、さらに詳しい検討を進める必要がある。

南海トラフの地震が発生する前後の期間は内陸地震の頻度が上がる「活動期」に入ると言われている。兵庫県南部地震以降、西日本では多くの被害地震が発生しているが、過去の例と比較すると地震はまだ少なく不足している状態である。今後も内陸地震が起きることを覚悟しなければならない。ここで紹介したように、内陸地殻内地震は非常に強い地震動を発生させるため、十分な備えが必要である。

 

 

2. 熊本地震を踏まえて関西の安全・安心を考える

林 康裕(京都大学大学院 教授)

まず地震動が建物を振動させる様子を単純なモデル実験による動画で紹介し、建物の固有周期による振る舞いの違いを理解するところから講演は始まった。同じ周期の揺れが継続する地震動では、その固有周期と一致する建物が徐々に共振して大きな振動になる。これには振動の成長を抑制するダンパーの設置が効果的で、モデル実験動画でも揺れが抑えられることが明瞭に示された。

一方、内陸地殻内地震で発生する地震動は一発の強烈な揺れ、すなわちパルス状のものとなる。こちらをモデル実験の建物に入力すると、パルスの固有周期と一致する建物が一瞬で大きく変形する。これは兵庫県南部地震で多くの木造建物を倒壊させたキラーパルスに相当する。周期がさらに長く、振幅も大きい地震動を入力すると、背の高い(=固有周期が長い)建物において、非常に大きく変形する様子が見られた。このような短時間の地震動については、ダンパーの制震効果はあまり期待できない。

熊本地震ではこの周期3秒程度のパルス状の大振幅の地震波が観測された。これは地表に断層が現れた西原村や阿蘇市一の宮町で顕著に見られた。この特徴的な揺れは、益城町でははっきりしない。また、兵庫県南部地震で観測された周期1秒のキラーパルスは断層に直交する方向の揺れだったが、熊本地震で注目される3秒のパルスは断層と平行する成分が卓越する点で異なる性質をもつ。

この揺れの特徴の違いが地域による被害状況と対応している部分がある。周期3秒の揺れが卓越した西原村、阿蘇市などでは、断層をまたぐ建物が食い違うような被害が見られたが、木造建物の倒壊は比較的少ない。周期1秒の揺れが卓越した益城町では、地域ごとの被害の差が非常に大きい。被害が小さかった場所が、なぜ小さかったかはまだ研究が不十分。この理由を解明する研究は重要である。

最大速度による倒壊率曲線を兵庫県南部地震と熊本地震について作成すると、新耐震以前の建物では両者は似た形状をしているが、新耐震以後の建物では150cm/s程度よりも強い地震動での被害率が大きく異なった。熊本地震では150cm/s以上の揺れで新しい建物であっても被害率が急上昇していた。熊本地震の被災地では耐震化率60%で倒壊率が60%という場所があり、これは耐震化の基準として満足できる数字とは言えない。

周期3秒のパルスは超高層建物に影響が大きい。そこで大阪市内に存在する免震、非免震の超高層建物をモデル化し、熊本地震で観測された地震動を入力してその応答を計算した。その結果、免震建物の上部構造最大層間変形角は0.01radを下回ったが、免震層の最大相対変位は1mを超えるものが多く、ほぼ全ての免震建物で擁壁衝突の可能性があることが示された。

今後、熊本地震で観測された3秒のパルス性地震動について、設計者は考慮することが求められるだろう。実効性の高い対策を、既成概念にとらわれない発想で見つめなおす必要がある。

 

 

記録担当 : 林 能成(広報分科会:関西大学)

 

    

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