地震防災フォーラム2012

−関震協20周年記念講演会−

開催報告

 

主催 : 関西地震観測研究協議会(関震協)

 : (社)日本建築構造技術者協会関西支部

協賛 : (社)土木学会関西支部

(社)日本地震学会

(社)地盤工学会関西支部

(社)日本建築学会近畿支部

日本地震工学会

(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部

関西ライフライン研究会

日時 : 平成24年1月12日(木)13:20〜16:45

会場 : 建設交流館 グリーンホール(大阪市西区立売堀2−1−2)

参加者 : 116名

 

1.開会の挨拶  釜江克宏先生(京都大学原子炉実験所 教授,関西地震観測研究協議会 座長)

土木学会認定  CPDとともに,建築CPD情報提供制度の対象ともなったことや,本フォーラムが関震協20周年にあたっており,これまでの関震協の足跡から将来のビジョンまでについての講演が予定されていることを紹介され,関震協会員,本フォーラム参加者への謝意を表されるとともに, 新座長として初めて,フォーラム開会の挨拶をされました.

 

2.「関西地震観測研究協議会2011年活動報告」  赤澤隆士(事務局

会の構成,会議の開催状況,分科会活動について,2011年の関震協の活動報告が行われました.特に,地震観測,緊急地震速報の配信,地震観測のリアルタイム化に関する検討について,詳しく報告が行なわれまし た.

 

3.「大震災から見た道路インフラの使命」  塚田幸広氏(国土交通省 国土技術政策総合研究所)

初めに,東北地方太平洋沖地震による道路インフラの被災状況について概観され,地震被害よりも津波被害が甚大であったこと,橋梁には甚大 な被害は少なかったが,取り付け部に段差が生じたため緊急車両が通行不可なったことなどが紹介されました.

三陸沿岸地域では,「くしの歯」作戦と呼ばれる内陸の東北道,4号線から沿岸部への道路啓開・復旧活動について解説され,交通関係の復旧状況の推移,主要高速道路・直轄道路の地震前後の交通量の変化,プロ ーブデータによる通行可能範囲などが示されました.

災害時には,高速道路などのダブルネットワークが避難や物資輸送の面で効果的であり,東南海・南海地震の津波影響範囲と考えられる紀伊半島などの高速道路ミッシングリンクには早期の対応が必要であることに言及されました.また,今回の被害を精査し,新しい設計法(基準等)への取り組み状況についても紹介されました.

      

 

4.「1995年兵庫県南部地震の震災の帯の再現」  松島信一先生(京都大学防災研究所 准教授)

17年前に発生した1995年兵庫県南部地震を振り返って,地震の特徴,揺れの特徴,被害の特徴について概観されました.

震度7の揺れを引き起こす要件は,放射特性や破壊方位性が大きく寄与する震源近傍であり,震源においてやや短周期のパルスを生成する強震動生成領域が存在することであると述べられました.また,震源の特徴に加えて,大阪湾や大阪平野を中心とする深い盆地構造の端部に位置する神戸市沿岸部において,エッジ効果とよばれる実体波と表面波の増幅的干渉が生じることによって大振幅の地震動となることを示されました. このような物理モデルによる地震動に対して,木造建物群モデルによる非線形応答解析に基づく計算により震災の帯が再現できたことを示されました.

1995年兵庫県南部地震の震災の帯を再現するに際して,関震協の観測記 録が重要な役割を果たしたことに言及されました.

(以上,文責:山田)

      

 

5.「大阪平野における長周期地震動」  香川敬生先生(鳥取大学 教授)

「大阪平野における長周期地震動」と題し,1)大阪平野の長周期地震動研究の歴史,2)関西地震観測研究協議会の観測体制,3)関震協ネットワークが捉えた長周期地震動について,ご講演をいただきました.

大阪堆積盆地構造の把握した大阪府モデルによる卓越周期分布の数値化,関震協設立の背景ならびに観測内容,記録等が解説されました.これらの記録を活用し,予測精度を向上させるとともに,将来発生すると想定される大地震(特に南海トラフの巨大地震)の強震動を精度良く観測し,後世に遺していくことが関震協の使命であるとの今後の展望をご講演いただきました.

 

6.「大阪平野における超高層免震建物の実設計例」  上 寛樹氏((株)奥村組技術研究所)

過去に設計を行った免震構造物及び免震部材の概要,地震応答解析結果について,ご講演をいただきました.

地震応答解析モデルでは,入力地震動として告示波,既往観測波,内陸断層(上町断層)波及び想定南海・東南海地震(長周期地震動)を利用した解析結果となる,最大応答加速度や建物の応答性状,更には,東北地方太平洋沖地震における応答観測結果の解説をいただきました.

 

      

 

7.「関震協20年の歩み」  釜江克宏先生(京都大学原子炉実験所 教授,関西地震観測研究協議会 座長)

関震協の設立目的や活動内容(分科会やWGによる活動,会員数の推移)の説明をいただきました.また,巨大地震時の被害軽減に繋がる今後の取組みをご講演いただくとともに,今後とも関震協への皆さまのご支援・ ご協力をお願いしますとの辞がありました.

 

 

8.「関震協の将来ビジョンについての私案」  澤田純男先生(京都大学防災研究所 教授)

関震協のあゆみ,最新鋭の地震観測への取組みについて,ご講演をいただきました.

関震協の最新鋭地震観測への取組みでは,観測地点の千点化や大崎市古川におけるパイロット・プロジェクトの内容の説明をいただきました.

 

 

9.閉会の挨拶  向井洋一先生(神戸大学 准教授,広報分科会 主査)

閉会にあたり,本フォーラムのまとめと各講師及び来場者への謝意,今後の抱負(後世への大震災等の記憶,関震協の保有記録の伝承)をいただくとともに,次年度シンポジウムへの参加をお願いしますとの辞がありました.

(以上,文責:岡田)

文責 : 株式会社 奥村組 岡田将人

株式会社 ニュージェック 山田雅行

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