地震防災フォーラム'07

来るべき東南海・南海地震に備えて(5)−

開催報告

 

主催 : 関西地震観測研究協議会(関震協)

協賛 : (社)土木学会関西支部

(社)日本地震学会

(社)地盤工学会関西支部

(社)日本建築学会近畿支部

日本地震工学会

(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部

関西ライフライン研究会

(社)日本建築構造技術者協会関西支部

日時 : 平成20年1月18日(金)13:40〜16:45

会場 : 建設交流館 グリーンホール(大阪市西区立売堀2−1−2)

参加者 : 103名

               

1.開会の挨拶

堀家正則先生(大阪工業大学 工学部 教授,関西地震観測研究協議会 座長

1995年1月17日の兵庫県南部地震から13年となるが,災害を風化させてはならないこと,関震協では毎年当フォーラムを開催し地震防災に関する最先端の研究成果を紹介していると述べた.また今回のフォーラムでは,①来るべき東海・東南海地震が連動して発生し超巨大地震となる可能性について,②長周期地震時に地盤剛性の非線形性を考慮した地盤応答特性についての研究成果を紹介し,関係各方面で役立たせていただければこれほど嬉しいことはないと述べた.

 

 

2.「関西地震観測研究協議会2007年活動報告」

赤澤隆士(事務局

当協議会の活動は会員の会費収入に支えられていること,活動を継続するために新規会員の勧誘を行い,2007年12月末時点で個人会員45人(80%増),法人会員47法人(12%増)となっていると述べた.

       

 

3.「東大阪における長周期地震時の1次元非線形動的解析(長周期応答WG活動報告)」

肥後陽介先生(京都大学大学院 工学研究科 助教)

東大阪地域は文献調査等より過去の東南海・南海地震で被害が卓越したことが推察される.同地域の地盤は地表面から-50mまでが,鋭敏性が高く軟弱な沖積粘性土層(Ma13),不飽和の砂礫層,洪積粘土層(Ma12),その下は固い砂礫層となっている.1次元動的解析手法には液状化解析手法LIQCA2D06を用い,地盤物性についてはボーリングより得た詳細な土質特性,動的力学特性を考慮した.解析結果では,Ma13層は軟弱性により大ひずみが発生し,高い鋭敏性により減衰が小さく加速度応答が増大すること,Ma13層の面的な広がりを把握することが重要であること,不飽和の砂礫層は地表面応答には影響が小さいことが示された.

       

 

4.「見えてきた巨大南海地震のスーパーサイクル」

岡村 眞先生(高知大学 理学部 教授)

高知市付近は南海地震想定震源域北端付近に位置し,年間6mm程度の速度で隆起している.しかし南海地震発生時には隆起量以上の沈降が生じ,海水により水没した.すなわち,同地域は南海地震のたびに常時の隆起量を超える沈降を繰り返している.東南海・南海が連動し巨大地震となった宝永南海地震(M8.6 1707年)では2m程度沈降した記録がある.同地域沿岸部の池や沼も南海地震で沈降し,その上に津波によって運ばれた砂,貝殻,木片などが堆積する歴史を繰り返している.このことをバイブロコアリングにより試料採取を行い,砂層に混じった貝殻や,植物の炭素の年代測定を行うことで割り出した.過去3500年の地震の発生間隔は,宝永南海地震のようなM8.6クラスの地震は300〜700年,昭和南海地震のようなM8.0クラスの地震は100年程度であった.来るべき南海地震は,2030年前後と考えると,宝永南海地震から300年を経過したことになり,東南海・南海地震が連動し巨大地震となる可能性も考慮すべきであると述べた.

       

 

5.「南海・東南海・東海地震群の連動/非連動の発生メカニズムについて ―地球シミュレータによる地震発生サイクルシミュレーションからの知見―」

平原和朗先生(京都大学大学院 理学研究科 教授)

岩石実験から得られた岩石の摩擦法則,沈み込むフィリピン海プレートの形状と,プレートの収束速度,地震探査結果から得られたプレート間の摩擦パラメータの不均質性を紀伊半島沖と東海沖に導入することで,地球シミュレータにより1707年宝永地震,1854年安政地震,1944年昭和東南海地震,1946年南海地震の連動/非連動の特性を定性的に再現できると述べた.また,このモデルによると,来るべきプレート境界型巨大地震の前には紀伊半島沖で10年間以上におよぶ大規模なスロースリップが発生することから,GPS網でこのスロースリップを捉えることで地震発生を予測できる可能性が示された.

       

 

6.閉会の挨拶

上林宏敏先生(大阪工業大学 工学部 准教授,広報分科会 主査

当フォーラムでは「南海・東南海地震に備えて」をテーマに今回で5回目の開催になること,今後はプレート境界地震の連動について新たな知見が出てくれば再度ご講演をいただきたいこと,内陸地震について被害想定の大きさから社会的に注目度が高まっておりフォーラムのテーマとして取り入れたいと述べた.最後に,今後とも関震協の活動にご協力をお願いするとともに,講演された先生方の労をねぎらい閉会となった.

 

文責 : 株式会社 奥村組 須田宗宏

 

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