地震防災フォーラム'05
−来るべき東南海・南海地震に備えて(3)−
開催報告
主催 : 関西地震観測研究協議会(関震協)
協賛 : (社)土木学会関西支部
(社)日本地震学会
(社)地盤工学会関西支部
(社)日本建築学会近畿支部
日本地震工学会
(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部
関西ライフライン研究会
(社)日本建築構造技術者協会関西支部
日時 : 平成18年1月13日(金)13:30〜16:45
会場 : 建設交流館 グリーンホール(大阪市西区立売堀2−1−2)
参加者 : 103名
1.開会の挨拶
家村浩和先生(京都大学大学院工学研究科 教授,関西地震観測研究協議会 座長)
関震協が1995年兵庫県南部地震を観測し、地震当日に開催された第4回日米都市防災会議において初代座長の土岐先生がその記録を紹介された逸話や長周期WGの立ち上げのきっかけとなった2004年9月5日の東海道沖地震による長周期地震動を観測したことにふれ、会員およびフォーラム参加者への謝意を表するとともに、観測を継続することの重要性を訴えた。
2.「スマトラ島アチェとタイプーケットにおける被害の概要」
家村浩和先生(京都大学大学院工学研究科 教授,関西地震観測研究協議会 座長)
スマトラ島沖地震の被害調査として、バンダアチェ、カオラックを訪問した際に調査された、モスクの震動による被害、橋梁の津波波力による平行移動、学校構造物の被害の多さなどについて講演した。また、今後の被害低減を目的として、津波の高さを示すモニュメントポール(ハザードマップ)を町中に立てる計画に関わり、現在85本程度立てる予定となっていることを紹介した。地震記録はなかったのかとの質問に対して、アチェの気象台で観測された地震記録が「振り切れて真っ黒な帯」としか見えなかったことも紹介された。
3.「震源モデルから見た2005年宮城県沖地震(M7.2)と想定宮城県沖地震 (M7.5前後)の関係」
釜江克宏先生(京都大学原子炉実験所 教授)
海溝型地震という点で東南海・南海地震と同じ宮城県沖地震を対象に、経験的グリーン関数法を用いたフォーワードモデリングによって、その震源の特定を試みた結果について講演した。地震調査委員会では、規模が小さいこと、陸域のアスペリティの位置が若干異なること、被害状況が異なるとの観点から、2005年宮城県沖地震は想定される宮城県沖地震とは異なると判断しているが、①アスぺリティが2つあること、②応力降下量が大きな値であること、③震度分布がよく似ていることから、「異なる」判断するにはもう少し慎重な検討が必要ではないかといった考えを示した。
4.「2005年に関西地震観測研究協議会で観測された地震記録」
鶴来雅人氏(財団法人 地域 地盤 環境 研究所)
関西エリア25箇所に設置された関震協ネットワークで観測された地震記録について、各年の観測地震、観測地震の時間分布・震央分布等を紹介し、ここ数年、和歌山と兵庫県南東〜京都中部〜滋賀県のエリアで発生している地震活動が高いことに言及した。また、2005年に観測された福岡県西方沖地震、宮城県沖地震、愛知県西部の地震について、その諸元、震度分布、波形・応答スペクトルを示され、その特徴を紹介した。
5.「弥栄観測点から盾津観測点への移設について」
赤澤隆士氏(財団法人 地域 地盤 環境 研究所)
関震協弥栄観測点の廃止及び盾津観測点(水平距離700m)への移設に伴い、約3ヶ月の同時観測記録(14記録)をもとに特性比較を行った。両観測点の地質構造は地表から30mまでほぼ同一である。また設置方位は盾津が真北から時計回りに21度(N21E)回転していること、弥栄は反時計回りに4度程度(N4W)回転していることが示された。また両観測記録のフーリエ・スペクトル比から2.5〜10Hz付近で盾津が弥栄よりも大きいが、これは弥栄での観測が基礎での入力損失の影響を受けていると指摘した。
関口春子氏(産業技術総合研究所)
海溝型巨大地震の広帯域地震動予測において、地震調査推進本部や中央防災会議での震源モデル(アスペリティや背景領域内部の応力降下量、すべり量、破壊伝播速度を一定値)では、アスペリティサイズと破壊伝播特性に規定される周期10〜30秒以下の領域での地震動が過小評価されると指摘した。アスペリティ領域内部や背景領域内部のすべり分布と破壊伝播速度に不均質を考慮した震源モデルで地震動を計算すれば、大阪平野の堆積層の厚い地域では地表面最大速度50カイン、継続時間300秒、6〜8秒が卓越周期となることを指摘した。
林 康裕先生(京都大学大学院工学研究科 教授,長周期応答WG 代表)
関震協における「東南海・南海地震時に想定される大阪平野およびその周辺域における長周期構造物の応答評価ワーキンググループ(長周期応答WG)」の活動内容及び今後の検討内容について報告を行った。本WGでは実構造物の地震観測データにより地震被害の低減策を検討する。これまでの活動で大阪における超高層建物、免震建物について地震観測データの入手が可能となった。長周期建築物の分析では①観測記録に基づく入力地震動の検討②長周期建物の応答特性③観測記録のシミュレーション解析④想定東南海・南海地震に対する建物の予測解析を考えている。土木構造物の分析では①長周期土木構造物の従来の研究事例の収集②想定地震動と観測地震動の収集③長周期土木構造物の応答評価を考えている。との発表があった。
上林宏敏先生(広島国際大学 助教授,広報分科会 主査)
参加者への感謝と、発表者の労をねぎらい、関震協フォーラムも9回目をとなり、東南海・南海地震に関する関心が高まってきていることから、年々参加者が増えてきている。次回は長周期応答WGから検討事例も示してもらえることと思う。本協議会による地震防災のための活動を、次の東南海・南海地震まで続けて行きたい、と述べた。
文責 : 株式会社 奥村組 須田宗宏
株式会社 ニュージェック 山田雅行
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