地震防災フォーラム'03
−来るべき東南海・南海地震に備えて(2)−
開催報告
主催 : 関西地震観測研究協議会
協賛 : (社)土木学会関西支部
(社)日本地震学会
(社)地盤工学会関西支部
(社)日本建築学会近畿支部
(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部
日本地震工学会
関西ライフライン研究会
日時 : 平成16年1月13日(火)13:30〜17:30
会場 : 建設交流館 グリーンホール(大阪市西区立売堀2−1−2)
参加者 : 129名
1.開会の挨拶
家村浩和先生(京都大学大学院工学研究科 教授,関西地震観測研究協議会 座長)
関震協は1995年兵庫県南部地震の1年前に観測を開始し本震記録を観測できたこと、入力地震動の勉強会やフォーラムも実施し成果を蓄積していること、会費収入に支えられた運営は単年度収支で赤字であるが、10周年記念CD-ROMを販売するなど収支改善に努力していること、等を報告するとともに、次の南海・東南海地震まで当協議会を存続させることが重要であり、会員各位の協力をお願いしたいと述べた。
第1部 来るべき南海、東南海地震に備えて(2)
2.「次の南海トラフ地震はどのような揺れと被害をもたらすのか」
岩田知孝先生(京都大学防災研究所 助手)
2003年十勝沖地震の記録では、周期7秒前後の長周期成分が震源から200km程度離れた勇払平野・石狩平野で最も大きいこと、M7程度の地震では周期3〜5秒以下の成分が顕著であるが、それより長周期側の成分はM8クラスの地震で顕著となることを示した。さらに、地震調査委員会の確率論的地震動予測地図や中央防災会議の南海トラフ沿いの想定地震に対する強震動シミュレーション結果等を紹介し、東南海・南海地震の断層面積は十勝沖地震の断層面積よりかなり大きく、大阪平野で長周期地震動が大きくなる可能性を指摘した。
3.「南海・東南海地震に対する三重県の取り組みについて」
中嶋宏行氏(三重県 地域振興部 地震対策チーム 地震対策グループリーダー 主幹)
三重県では、4つの目標、12の施策の柱、50のアクション、355の具体的なアクションからなるアクションプログラムを策定し、平成14年度から5ヶ年計画を推進している。具体的な取り組みとしては、津波対策としてシミュレーションと避難計画の策定、次の時代を担う子どもたちへの防災教育の実施、建物の耐震化対策の策定と実施、産学官民の協働による防災対策の推進である。
4.「災害とラジオ〜阪神・淡路大震災は、何を問うたか〜」
熊和子氏(毎日放送ラジオ局次長 兼 制作報道センター長)
兵庫県南部地震時の放送局の対応を中心として、災害とラジオについて講演した。震災直後は情報が少なく被災状況の認識に時間がかかったが、当日は8:30から特番を組み始めたこと、当初3日間はコマーシャルを休止し被災地に向けた放送に徹したが、大規模災害時における報道のあり方・組織の対応・判断の難しさに直面させられたこと、その後防災関連放送を開始したこと、等について具体例を挙げて説明した。最後に、停電時でも情報を得ることが出来るラジオは災害時のライフラインであり、都市に広がる「難聴取空間」の解消に向けての動きにつながれば幸いである、と述べた。
第2部 関西地震観測研究協議会で観測された
地震記録の特徴とそれを用いた研究例
5.「2003年に関西地震観測研究協議会で観測された地震記録の特徴」
鶴来雅人氏(財団法人 地域 地盤 環境 研究所)
関西地震観測研究協議会で採取された地震記録について、各年の観測地震、観測地震の時間分布・震央分布等を紹介するとともに、2003年に観測された5月26日宮城県沖、7月26日宮城県北部、9月26日十勝沖地震や、近畿地方各地・上町断層付近で発生した地震および記録の特徴を個別に説明した。さらに、関震協観測10周年CD-ROMの内容および販売について報告した。
寺田邦雄氏(株式会社 竹中工務店)
兵庫県南部地震において、①神戸ポ−トアイランドで液状化し、六甲アイランドで液状化しなかった理由を、洪積粘土層(Ma12)のせん断剛性の違いで説明した。②堆積地盤を伝播してきたS波には、ダイレイタンシ−によって発生した高周波のP波が含まれていることを説明した。③液状化している地盤での支持力を計算する方法を提案し、液状化地盤上の直接基礎建物が転倒しなかった理由を説明した。
釜江克宏先生(京都大学原子炉実験所 助教授)
想定南海地震・想定東南海地震を対象として、経験的グリーン関数法を用いた強震動予測を大阪平野とその周辺で実施し、「試算結果」を報告した。南海地震に対して大阪市内で予測された地震動は、最大振幅が80gal,30cm/s程度であるが、波形の継続時間が非常に長く、擬似速度応答スペクトル(減衰5%)は周期5秒で150cm/s前後の大きな値となった。東南海地震に対しても良く似た結果が得られたが、今後は予測精度を高めることが課題である、と補足した。
岩田知孝先生(京都大学防災研究所 助手,地震記録分科会 主査)
関西では大地震が静穏期と活動期を伴いながら繰り返し発生することが知られており、1995年兵庫県南部地震や2000年鳥取県西部地震の発生は、次の活動期の始まりを示すと言われている。今後は、活断層と共生できる、地震に強い社会を目指す必要があり、次の東南海・南海地震まで本協議会を続けたい、と述べた。
文責 : 株式会社 竹中工務店 技術研究所
天池文男
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