地震防災フォーラム'02

来るべき東南海・南海地震に備えて

開催報告


 

主催 : 関西地震観測研究協議会

協賛 : (社)土木学会関西支部

(社)日本地震学会

(社)地盤工学会関西支部

(社)日本建築学会近畿支部

(社)建設コンサルタンツ協会近畿支部

日本地震工学会

関西ライフライン研究会

日時 : 平成15年1月15日(月)14:00〜17:20

会場 : 建設交流館 グリーンホール(大阪市西区立売堀2−1−2)

参加者 : 130名

 

  

東南海地震の発生確率は今後30年で50%,南海地震の発生確率は今後30年で40%,大阪府下においても震度6弱以上,局所的には6強の揺れが,また,大阪・神戸でも波高3m程度の津波が予想されている。このような東南海地震・南海地震に対し,現段階での学術面での取り組み,行政面での取り組みが紹介された

 

1.開会の挨拶

入倉孝次郎先生(京都大学防災研究所 教授,関西地震観測研究協議会 座長

東南海・南海地震の地震動予測が行われているが,その作業の中で地震動の震源特性を把握することが重要である。そのためには震源域で発生している微小地震を観測することが必要不可欠である。現在,全国各地で地震計ネットワークが整備されているが,これらの地震計は加速度型である。これに対し,関西地震観測研究協議会ネットワークで使用している地震計は速度型である。速度型地震計は長周期の微小地震を観測する上での精度は優れており,このネットワークの意義は少しも廃れていない。また,地震観測以外に今回のようなフォーラムを開催し,社会に貢献したい。そのためにも,ますます関西地震観測研究協議会を盛り上げていきたいという挨拶がなされた。

 

2.「東南海・南海地震による揺れの予測」

入倉孝次郎先生(京都大学防災研究所 教授,関西地震観測研究協議会 座長

地震動の強震動予測の現状が紹介された

東南海・南海地震は似たような震源域で発生するものの,地震の様相(規模,被害の与え方)が毎回異なる。最近の研究から地震時の揺れの強さは震源域の大きさで決まるのではなく,震源域内のすべりの不均質性によることが分かってきている。この不均質性(アスペリティと呼ばれる)がわかれば,次の地震がどのような震源域でどの程度の規模になるか,さらにどこに強い揺れが生じるかが予測可能となる。これまでアスペリティは地震の震源データ,海底地形,などの情報から震源域内に3つのアスペリティが推定されており,これをもとに各地の地震動波形の計算が行われている。

 南海地震では,堆積層の厚さにより36秒の長周期の震動が予想されるため,超高層・長大橋・高圧タンクのような長大構造物が被害を受ける可能性がある。南海地震は迫っており,きめの細かい強震動予測により災害軽減のための準備対策が必要とされている。

<質疑>

質問者:地震予知はできるのか?

入倉 :シナリオ通りの地震が発生するとするならば,確率的予知といった長期的な予知はできる。しかしながら,「何月何日あるいは1ヶ月先に」といった短期的予知はできないというのが科学者の一般的な見解である。

質問者:地震動の周期に対してアスペリティはどのような影響を及ぼすのか?

入倉 :アスペリティが小さく(かつ大きな変位が発生する)と短周期地震動が発生し,アスペリティが大きいと長周期地震動が発生する。兵庫県南部地震はアスペリティが小さかったため短周期地震動が卓越し,過去の東海・東南海・南海地震はアスペリティが大きかったため,長周期地震動が発生した。今後発生する東海・東南海・南海地震も長周期地震動が予測されている。

  

 

.「東南海・南海地震による津波の発生とその防災」

高橋智幸先生(秋田大学工学資源学部土木環境工学科 助教授)

津波の概要(津波の定義・発生・解析法・被害),東南海・南海地震で発生する津波の予測,解析手法SaSTの紹介がなされた。

津波は英語名もTsunamiであり,日本語がそのまま英語となっている.その発生原因としては,地震(約9割)・地すべり・火山・隕石が挙げられる。

東南海・南海地震で発生する津波は日本全国に及び,大阪では3m程度と予測されている。このように全国に被害を及ぼすと予想される東南海・南海地震だが,市町村単位での津波防災への取り組みは今のところほとんどなされておらず,ハザードマップが作成されているのは全国で35%,東南海・南海地震に限らず津波被害が大きいと予想されている東北・静岡を除くと18%,さらに市独自で作成しているのは6%にとどまっているのが現状である。

  

 

4.「東南海・南海地震防災対策特別措置法と内閣府の対応について」

佐藤忠晴氏(内閣府地震・火山担当参事官補佐)

国としての東南海・南海地震への取り組みが紹介された。

国としては法を整備している段階であるが,財政的な支援は国庫の台所事情から今のところなく,自治体に任せるという方針である。一方,自治体も台所事情が苦しいのが現状であり,参加者からは国として財政面も含めきちんとした方針を打ち出して欲しいというのが参加者からの意見であった。

  

 

5.2002年に関西地震観測研究協議会で観測された地震記録の特徴

鶴来雅人氏(財団法人地域 地盤 環境 研究所)

関震協ネットワークでは過去に遠く台湾・インド・トルコの地震も観測されたという紹介がなされた。

  

 

6.閉会の挨拶

広報分科会の家村主査(京都大学大学院教授)より、閉会の挨拶がなされた。

 

文責 : 応用地質株式会社 関西支社

技術部 長谷川 信介

 

 

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