入力地震動検討分科会合宿報告

 

入力地震動作成技術の習得を目指して、堀家先生(大阪工業大学)を主査、釜江先生(京都大学)を副主査としてお2人のご指導の元にこれまで十数回に渡り入力地震動に関する勉強会を開催してきました。

勉強会は、通常(財)地域 地盤 環境 研究所において、3週間に1回程度行っています。先ず、地震学の基礎的な知識をえるため、「QUANTITATIVE SEISMOLOGY Theory and Methods」の輪読を行いました。 最近は、より具体的な入力地震動の作成法を理解するため、大崎総合研究所の壇氏による「強震動予測のための半経験的波形合成法に関する総合報告」の勉強を行いました。

2002年9月1−2日に、これらの総仕上げとして、また更に理解を深めるために合宿を行いました。この合宿は、関震協の強震計ネットワークで得られた地震波形記録を用い、実際にプログラムを動かして強震動を作成することでさらに理解を深めることを目的としています(背景の写真は合宿風景)。

釜江先生(京都大学)から提供された経験的グリーン関数法のプログラム、大西氏(松村組)から提供された統計的グリーン関数法のプログラム(このプログラムのオリジナルは堀家先生(大阪工業大学))を動かして、強震動の作成を実際に行ないました。 これは波形に対する感覚を養うために役立ちました。 また香川氏(地盤研究財団)から提供されたEXCEL版経験的グリーン関数法のプログラムは、波形合成のイメージを養うために効果的でした。

参考のため今回の合宿内容を示すと以下のようになります。

日時  平成14年9月1日(日)13:00−2日(月)17:30 

場所  関西電力共済会館(京都会館)

出席者 堀家(大阪工業大学),釜江(京都大学),上林(広島国際大学),川辺(京都大学),池田(飛鳥建設),大西(松村組),水谷(東京電力),西村(パシフィックコンサルタント),羽田(ニュージェック),馮 (フジタ),三明(関西電力),吉田(竹中工務店),依藤(日建設計),香川,宮腰,赤澤,趙,アナトリ,長 (以上,地域地盤環境研究所:分科会事務局)(敬称略・順不同)

スケジュール

9月1日 

13:00ー18:00 経験的グリーン関数法について(釜江先生)

19:30ー20:00 同 EXCELプログラムについて(香川氏)

20:00ー20:30 北摂津地域での経験的グリーン関数法の適用例(上林氏)

9月2日 

9:30ー12:30 経験的グリーン関数法について(釜江先生)

13:30ー16:30 統計的グリーン関数法について(大西氏)

 

合宿参加者の羽田氏からは、合宿について次のような感想をいただいております。

 


 

関西地震観測研究協議会 入力地震動検討分科会 合宿に参加して

 

2002年9月1日〜2日の二日間にわたって関西地震観測研究協議会入力地震動検討分科会合宿が行われ、この合宿に参加しました。この合宿は通常の講習会・セミナーなどとは異なり、参加者全員がノートパソコンを持参し、実際に波形合成を行うという大変めずらしい形式でした。

初めは京大原子炉研・釜江先生から経験的グリーン関数法のプログラムについて説明して頂き、実際にプログラムを動かして波形合成をしてみることになりました。昨年(2001年)8月25日京都府南部に発生した地震を対象地震とし、近傍で発生した小地震(2001年1月26日)を要素地震として波形合成を行いました。解析に必要なパラメータの設定や入力などに苦労しながらもどうにか波形合成を行うことができ、合成波形と対象地震の波形を比較すると見事なほどに一致することができました。さすがに参加者全員がそれぞれの自前のパソコンでプログラムを動かすということで、マイナーなトラブルなどで時間はすぐに過ぎていきました。

夕食後は歓談を兼ねて、地盤研・香川氏よりExcelによる経験的波形合成法のデモをして頂き、波形合成の計算内容についてさらなる理解が得ることができました。また、この歓談では先生方の貴重な体験談などを聞くことができ非常に楽しい一時でした。

合宿二日目は経験的グリーン関数法によるパラメータスタディを行い、断層の設定方法などを変更することによって、より対象地震に一致させることを目標としました。昼食後は統計的グリーン関数法による波形合成を行いました。大工大・堀家先生および松村組・大西氏からプログラムの入力方法や解析方法について説明して頂き、経験的グリーン関数法の時と同じ地震を対象地震として波形合成を行いました。設定するパラメータが多く実際に波形合成するまでがむずかしく感じました。経験的グリーン関数法の場合ほど良い一致はみられませんでしたが、観測記録がなくても波形合成を行えることがわかりました。

この二日間は難しい内容ばかりではありましたが、非常に有意義な合宿となったと思います。やはり講習を聞くばかりではなく、実際に作業を行いながら、先生方のご指導・アドバイスを頂くことができたのが非常によかったと思います。

((株)ニュージェック 建築構造部 羽田 浩二)

 


 

<今後の計画>

これまでは統計的グリーン関数法、経験的グリーン関数法などの経験的あるいは半経験的手法を勉強しました。今後は理論的方法、すなわち差分法による波動場の計算を勉強する予定です。これまでと同様に、セミナーで何度か勉強会を行った後、実際にプログラムを動かすための合宿あるいは一日セミナーを考えております。

 

 

トップへ戻る