地震防災フォーラム'01

−関西の最近の地震事情について−

開催報告


 

主催 : 関西地震観測研究協議会

協賛 : (社)土木学会関西支部

(社)日本地震学会

(社)地盤工学会関西支部

(社)日本建築学会近畿支部

日時 : 平成14年1月28日(月)14:00〜17:10

会場 : 建設交流館 グリーンホール(大阪市西区立売堀2−1−2)

参加者 : 99名

 

1.開会の挨拶

広報分科会の家村主査(京都大学大学院教授)より、開会の挨拶が行われた。

 

2.「測地学で見た西南日本の地殻活動:今日まで,そしてこれからの30年」

橋本学先生(京都大学防災研究所地震予知研究センター教授)

講演内容

●100年間の測地測量の成果から平均的な歪速度図が得られる。太平洋岸ではプレートの沈み込みによる大きな縮みが見られる。新潟〜神戸に至るベルト地帯でも大きな縮みが見られ,1995年兵庫県南部地震も対応している。ただし,2000年鳥取県西部地震の場所では顕著な歪は検出されなかった。

●国土地理院により全国約1000ケ所からなるGPS連続観測網(GEONET)ができ,列島規模の地殻変動が連日手にとるようにわかるようになった。

●GEONETも活断層近傍の変動を捉えるには密度が粗いので,鳥取県西部地震後,GPS大学連合により震源域周辺に高密度観測網を展開した。その結果,本震約6ケ月後でも左横ずれの運動が継続していることがわかった。

●山崎断層と中央構造線でGPS稠密観測を行った。山崎断層では5mm/年を超える変位速度は得られなかった。南海地震が30年以内に発生する確率は40%と言われているが,GPS観測からもあと50年程度で南海地震と同じエネルギーが溜まると考えられる。

●測量データから断層すべり欠損を推定し応力変化の大きいところを求めると,兵庫県南部地震のみならず鳥取県西部地震も対応する。

●関西で注意すべき活断層として中央構造線,花折断層,山崎断層,有馬・高槻断層,京都西山断層,上町断層,等が挙げられる。

 

.「南海地震と東南海地震の強震動」

入倉孝次郎先生(京都大学防災研究所教授,関西地震観測研究協議会座長)

講演内容

●南海地震,東南海地震は近い将来やって来るので,準備活動を行う必要がある。

●これまで,一応観測記録が得られていることなどから昭和南海地震を対象に地震動シミュレーションを行っていたが,被害から考えると,明らかに安政南海地震の方が大きく,この地震動を再現する必要がある。昭和南海地震の応力降下量は10bar程度だが,安政南海地震の場合30bar程度であろう。

●現在は兵庫県南部地震のような直下型地震に対する対策が考えられているが,南海地震では地震動の性質が異なることも考慮しなければならない。<兵庫県南部地震のようなパルス的な波形(10秒程度)と南海トラフ地震で発生する長周期・長時間(長い記録400秒)の地震波形とは特徴が異なる>

●現在は東海地震を想定して対策がたてられているが,あと10年程度起こらなければ,東海地震単独では発生しにくいと考えられる。安政東海地震のように東海地震と東南海地震が同時に動くことを想定して対策を講じるべきであろう。

●活断層には地震発生の可能性の高り,GPS観測などにより調査しておく必要がある。内陸部にある活断層の地震として活動する可能性が一番高いのが糸魚川−静岡構造線である。近畿地方においても南海地震の前後50年程度は内陸地震が起こる可能性が高い。

●シナリオ地震に対する強震動予測の枠組

①地震発生の長期評価

②強震動記録またはその評価

③地下構造のモデル化(良く揺れるところ,揺れないところ)

これらを予測し,過去の地震で検証されるべきである。

●震源インバージョンの研究成果として,不均質なすべり(アスペリティ)分布が一定のスケーリング則に支配されていることがわかってきた。巨視的断層パラメータと微視的断層パラメータを推定し震源をモデル化する手続きを「強震動予測レシピ」としてまとめた。

 

.観測データから見た関西の地震動特性の考察

(1)2001年に関西地震観測研究協議会で採取された地震記録について

鶴来雅人氏(財団法人地域 地盤 環境 研究所)

講演内容

●観測点配置の現状および観測開始(1994年)以降の記録採取状況(観測地震数,主な観測地震)が紹介された。

●2001年に関震協で採取された地震の時空間分布が示された。

●2001年の観測地震のうち以下に示す2地震の観測記録の特徴が示された。

・ 2001年8月25日22時21分(京都府,M=5.1)

・ 2001年3月24日15時27分(安芸灘,M=6.7)(芸予地震)

 

(2)関西地震観測研究協議会記録を用いた強震動予測事例

岩田知孝先生(京都大学防災研究所)

講演内容

●地震観測記録によって半経験的・理論的地震動予測のための震源および地下構造のモデル化ができた事例(兵庫県南部地震や鹿児島県北西部地震)が紹介された。

●地震観測記録を用いる経験的グリーン関数法によって琵琶湖西岸断層が活動した場合の強震動予測をおこなった事例が紹介された。

●高精度の地震観測記録,すなわち地震観測そのものの重要性・有用性が力説された。

 

5.閉会の挨拶

釜江会員(京都大学)より、閉会の挨拶が行われた。

 

 

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